不動産の売買や相続の際には、登記費用が発生します。
この費用は、主に登録免許税と司法書士への報酬で構成されています。
登録免許税の額は、売買や相続などの登記の目的によって異なります。
以下では、それぞれの状況においてかかる費用について詳しく説明します。
費用は登記の種類ごとに異なる
不動産の所有権の変更が必要な場合、たとえば売買や相続の際には、「不動産登記」という手続きを行います。
不動産登記とは、不動産の具体的な住所や面積、建物の構造などの物理的な状況だけでなく、抵当権や所有権などの権利関係を明確にするものです。
不動産登記制度が存在することにより、所有権の証明ができるため、安心して不動産取引を行うことができます。
不動産登記には、売却や相続、購入などの状況に合わせた種類がいくつか存在します。
登記を行うことで、登記の記録が管理される人口帳である「登記簿」や、電子化された登記記録に記載されます。
これらの情報は手数料を払うことで、一般の人でも閲覧することが可能です。
ここからは、具体的な不動産登記の種類についてご紹介します。
所有権保存登記
所有権保存登記は、まだ誰のものでもない不動産の所有権を最初に確立するために行われる登記手続きのことを指します。
この登記は、主に新築の一戸建てやマンション、または以前の所有者が所有権の登記を行っていない土地や建物などに対して行われることがあります。
建物表題登記
建物表題登記は、建物を新築した際に行われる登記のことを指します。
この登記では、建物の物理的な状況が登記記録の「表題部」に記録されます。
この登記は、建物が完成してから1か月以内に行う義務がありますので、お忘れなく行ってください。
なお、建物表題登記は建物の存在を登記するものであり、所有者を登記するための「所有権保存登記」とは異なります。
つまり、住宅を新築した場合は、所有権保存登記と建物表題登記の両方が必要になりますので、注意が必要です。
所有権保存登記は、建物の所有者を登記するための手続きです。
これに対して、建物表題登記は建物の物理的な状況を登記する手続きとなります。
また、建物表題登記は建物が新築された際に行われますが、建物の改築や増築、解体などの場合にも再度登記が必要です。
したがって、建物に変更があった場合は、適切な登記手続きを行い、情報を正確に更新してください。
以上が建物表題登記の概要となります。
建物の新築や変更があった場合は、適切な登記手続きを行い、登記の義務を果たしてください。
所有権移転登記
所有権移転登記は、不動産の所有者が変わった場合に行われる登記のことです。
この登記は、売買や贈与、相続などの理由によって引き起こされます。
例えば、中古住宅を購入する際には、建物と土地の両方の所有権移転登記が必要です。
新築住宅の場合、土地の所有権は第三者から譲渡されるため所有権移転登記が必要ですが、建物自体は新品であるため、所有権保存登記が行われます。
抵当権設定登記・抵当権抹消登記
抵当権設定登記とは、住宅ローンを使うときに必要な手続きのことです。
住宅ローンを借りると、金融機関は返済が滞った場合に不動産を差し押さえて優先的にお金を取り戻すことができます。
この権利を明確にするために、抵当権設定登記を行います。
住宅ローンを完済したら、抵当権をはずすために、抵当権抹消登記の手続きが必要です。
登記費用と軽減措置
不動産登記には、さまざまな費用がかかります。
まず、登録免許税とは、不動産を登記する際に発生する税金のことです。
この税金は、登記手続きを自分で行う場合でも、司法書士に依頼する場合でも必ず発生します。
登録免許税の税率は状況によって異なり、土地の取得価額や建物の価格に基づいて算出されます。
また、不動産登記には、住民票や登記簿謄本といった書類を取得するための登記手数料も必要です。
登記手数料は、不動産の登記に関わる書類を発行するために支払われる料金であり、登記の内容や書類の量に応じて異なります。
さらに、不動産登記を依頼する場合、司法書士に報酬を支払う必要があります。
司法書士報酬は、司法書士が登記手続きを代行する場合にのみ発生します。
自分で登記手続きを行う場合は、この報酬は不要です。
したがって、不動産登記には登録免許税、登記手数料、および司法書士報酬が含まれます。
各費用の具体的な金額や税率は、登記の内容や状況によって異なるので、事前に詳細な調査や計算が必要です。
登録免許税
登録免許税は、登記や登録の手続きをする人が国に支払う税金です。
税金の額は、課税標準額と税率によって計算されます。
課税標準額は、固定資産税評価額が登記簿に記載されている場合、その価格が基準となります。
固定資産税評価額とは、固定資産税を計算する基準として登記簿に登録された価格のことで、各自治体ごとに設定されています。
例えば、土地の評価額は地価公示価格の70%、建物の評価額は再建築価格の50~70%となります。
新築の建物については、まだ固定資産税評価額が存在しない場合は、建物の構造や用途に応じて、各法務局が設定した価格が使われます。
税率と軽減措置
2024年3月31日まで、居住用住宅の登記には登録免許税の軽減税率が適用されることがあります。
居住用住宅で軽減税率が適用されるのは、所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記の3種類です。
軽減税率の適用を受けるためには、住宅用家屋証明書を取得する必要があります。
住宅用家屋証明書は、住宅が所在する市町村で交付されますが、取得するためにはいくつかの条件があります。
主な条件は以下の通りです。
– 住宅は居住用であること – 新築基準に適合していること – 床面積が50㎡以上であること – 新築後または取得後1年以内に登記を行うものであること さらに、長期優良住宅と認定された住宅は、登録免許税に関してより優遇された軽減措置を受けることができます。
長期優良住宅とは、耐震性や居住環境、省エネルギー性などの要件を満たし、長期間安心して住むことができる住宅のことです。
同様に、認定低炭素住宅と呼ばれる二酸化炭素排出に対策が講じられた住宅も、優遇された軽減措置が適用されます。
例えば、長期優良住宅に認定されたマンションや、認定低炭素住宅に認定された住宅の所有権保存登記にかかる登録免許税の税率は、2024年3月31日までは1000分の1まで軽減されます。
専門家に登記を依頼する場合の費用相場
不動産登記は、自分で行うこともできるが、手続きは複雑で、深い知識や理解を必要とするため、司法書士に依頼する人もいる。
自分で不動産登記を行おうとする場合、時間がかかったり、書類の間違いのリスクもあるため、迅速さと安全性を優先するなら、司法書士に任せることがおすすめだ。
さらに、一戸建てや土地の登記をする場合、別途土地家屋調査士にも調査を依頼する必要がある。
土地家屋調査士とは、一戸建てや土地の不動産登記に必要な情報の調査や測量、そしてその結果に基づく登記申請手続きを代理で行う専門家だ。
それでは、司法書士と土地家屋調査士に不動産登記を依頼する場合の費用相場を見てみよう。
司法書士の報酬
司法書士に依頼する際の報酬額は、司法書士の裁量に任されているため、依頼する司法書士によって金額は大きく異なります。
一般的に言われる報酬の相場は1万~10万円程度ですが、具体的な金額を把握するためには、事前に見積もりを依頼することが重要です。
報酬に加えて、登録免許税や不動産登記手続きの書類代、交通費など、実費として支払う必要がある諸費用もあります。
全体の費用を計算すると、それなりに高額になることもありますので、複数の司法書士に相談して比較検討することをおすすめします。
土地家屋調査士への報酬
不動産の登記手続きを行う際には、登記の申請書を提出する必要があります。
この申請書は、物理的な状況や面積などを記載する「表題部」と、所有権や抵当権などの権利関係を記載する「権利部」に分かれています。
このうち、権利部は通常、司法書士が担当することが一般的です。
司法書士は、所有権や抵当権に関する法的な手続きを専門的に行うことができる資格を持っています。
一方、表題部は土地家屋調査士が担当することが一般的です。
土地家屋調査士は、物件の現地調査や地積測量などを行い、表題部に必要な情報を収集して提供します。
ただし、登記手続きの報酬額は、実際にどのような登記を行うかによって大きく異なる場合があります。
例えば、売却する家の所有権を移転させる場合や、抵当権を設定する場合など、それぞれの手続きには異なる費用が発生します。
そのため、自身の家の売却に必要な登記手続きにおいてかかる費用を事前に専門家に相談しておくことが重要です。
不動産登記費用を安く抑えるには?
不動産の売買や所有権の移転などの取引には、不動産登記が必要です。
不動産登記にかかる費用を抑える方法をご紹介します。
自分で登記を行う
不動産の登記を自分で行うと、専門家に報酬を支払う必要がなくなるため、登記にかかる費用を節約することができます。
ただし、自分で書類を集めたり記入するなどの手続きが必要になります。
これらの作業は慣れていないと時間がかかったりうまく進まなかったりすることがあります。
したがって、手間や時間を省きたい場合は、費用がかかるものの、司法書士に登記の手続きを依頼することをおすすめします。
そうすることで、専門家の知識と経験を活用してスムーズに登記を進めることができます。
司法書士事務所を比較する
司法書士に依頼する際には、まずは1つの事務所だけでなく、複数の事務所に見積もりを出してもらうことが重要です。
これにより、相場を把握することができます。
登記には複雑な手続きが必要であり、そのためには多額の費用がかかることもあります。
不動産を売却や購入する場合や相続手続きを行う際には、事前に登記にかかる費用を把握し、資金計画を立てておくことが重要です。
売却や購入、相続といった場面での登記の詳細については、以下の記事をチェックしてみてください。
まとめ
ここまで登記の種類や費用、軽減措置などについて詳しく説明してきましたが、不動産の売却を考えている方の中には、登記費用を含めた諸費用について心配されている方もいらっしゃるかもしれませんね。
そんな方には、まず売却したい物件の査定を受けてみることをおすすめします。
査定では、物件の現在の価値や将来の見込み、周辺の相場などを考慮して、どれくらいの収益が得られるかを見積もってもらうことができます。
査定結果を参考にして、ある程度の収益が得られることが見込めた場合は、売却による資金計画を立てることができます。
売却による収入を使って、購入したい別の物件や他の用途に資金を充てることができます。
また、売却に伴う諸費用についても考慮しておく必要があります。
登記費用や仲介手数料、税金などがかかる場合もありますので、事前に確認しておくことが重要です。
売却を検討している方は、物件の査定を受けて今後の資金計画を立てることをおすすめします。
それにより、売却によって得られる収益やかかる諸費用をあらかじめ把握することができ、よりスムーズな売却手続きができるでしょう。