不動産共有名義とは、複数の人が1つの不動産を所有することを指します。
これにはいくつかのメリットがありますが、注意しなければならない点もあります。
不動産の共有名義とは?
不動産共有名義とは、一戸建てやマンション、土地などの不動産を取得するために、複数の人が共同で出資し、出資額の割合に応じて所有持分を登記(所有権の関係を社会に公示するため、登記簿に書き込む)することを意味します。
例えば、夫婦が4,000万円の一戸建てを購入するために、それぞれ2,000万円の出資を行った場合、所有持分はお互いに「2分の1」となります。
不動産の所有権は、この共有名義のもとで持たれます。
不動産共有名義を利用する事例には、単独で不動産を購入するための資金が十分でない場合や、相続によって複数の相続人が不動産を相続した場合などが考えられます。
それぞれの共有者は、自身の出資割合に応じて所有権を有することで、不動産の利用や売却に関する決定を共有することができます。
共有名義の不動産には、いくつかのメリットやデメリットがあります。
不動産の共有名義のメリット
不動産を共有名義で所有すると、税金の特例措置による優遇措置や節税メリットがあります。
具体的なメリットについて、以下で詳しく説明します。
住宅ローン控除がそれぞれに適用される
夫婦でマイホームを買って、名義を共有すると、お二人の収入それぞれに対して「住宅ローン控除」を受けることができます。
2023年の住宅ローン控除制度では、住宅ローンの終わりの年に残っている金額の0.7%(または最大の控除額)が最大13年(中古住宅なら10年)にわたって、所得税または住民税から減税されます。
共有名義の場合には、お二人とも住宅ローン控除を受けることができるため、控除額が大きくなる可能性があります。
つまり、お二人の収入それぞれに基づいて個別に計算されるため、お互いの収入が高い場合や、住宅ローンの残高が大きい場合には、より多くの控除を受けることができます。
これによって、家計の負担を軽減することができるでしょう。
売却時に特別控除がそれぞれに適用される
マイホームを売却する際には、譲渡所得から最高で3000万円までの控除が受けられる特例があります。
この特例は、所有期間の長短に関係なく適用されます。
また、夫婦が共有名義で不動産を所有している場合、夫婦それぞれが3000万円の控除を受けることができる可能性があります。
つまり、夫婦の合計で6000万円までの控除が受けられる可能性があるということです。
この特例は、所有者が同じ家族内である限り適用され、一定の条件を満たすことが必要です。
しかし、具体的な条件や手続きについては、税務署や税理士に相談することをおすすめします。
相続税が節税できる
共有名義とすることで、夫婦が所有するマイホームの相続税を単独名義の場合よりも低く抑えることができるかもしれません。
具体的に言えば、もしマイホームが夫の単独名義である場合、夫が亡くなると不動産の評価額全体が相続税の課税対象となります。
しかし、夫婦で共有名義として登記しておけば、相続税の対象となるのは夫の持分のみですので、税金の額を減らすことができるのです。
不動産の共有名義のデメリット
不動産の共有名義にはお得な点もありますが、同時に以下のようなポイントにも気を付ける必要があります。
不動産を購入する際には、いくつかの留意事項を考慮し、慎重に名義人を決めましょう。
共有者全員の同意がなければ売却できない
共有名義の場合、他の所有者の同意なしで売却することは許されません。
例えば、自身が90%の持分を所有している場合でも、共有名義の契約には例外はありません。
共有名義においては、全ての名義人が署名と捺印をすることが必要です。
共有者が死亡すると相続の対象になる
もし不動産の共有名義人の一人が亡くなった場合、その人の持ち分は相続の対象となります。
この状況では、複数の人々が共有名義人となり、元々2人で共有していた不動産が3人や4人といった数に増える可能性があります。
このような場合、不動産を売却する際には、共有名義人全員の意見が一致しないという問題が発生する可能性もあるでしょう。
つまり、共有者の中で意見の食い違いやトラブルが生じる可能性があります。
贈与税の課税対象となるケースもある
例えば、不動産の所有者である妻が仕事を辞めて収入がなくなった場合、夫が妻の分の住宅ローンを支払うことがあります。
しかし、この場合、「妻から夫への贈与」と見なされ、夫に贈与税がかかることがあります。
さらに、夫が単独で不動産を購入し、妻と共有名義で登記してしまった場合、妻には「不動産購入価格の半分に相当する贈与」があったと判断され、贈与税が課せられる可能性もあります。
税金が予想外に発生しないようにするためには、特に名義人を決める際に注意が必要です。
住宅ローン諸費用が余分にかかる
物件を購入したり住宅ローン契約を結んだりする際には、さまざまな費用が発生します。
その中には事務手数料や登記手数料などが含まれています。
特に複数の人が共有名義を持つ場合、名義人の数だけこれらの費用がかかる可能性があるため、名義人が1人の場合に比べて費用がかさむことがあります。
離婚の際の財産分与が複雑になる
もしも夫婦が離婚することになり、その際に不動産が共有状態になっている場合、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
以下では、具体的なトラブルの例を詳しく説明しましょう。
売却や賃貸借がしにくい
最初に述べたように、1人だけの判断では共有不動産の売却や賃貸借はできません。
共有している不動産は、売却や賃貸借をするためには名義人全員が同意する必要があります。
したがって、一方が売却したいと思っても、離婚相手から同意を得る必要があります。
離婚後も連帯保証の関係が続く
夫婦がペアローンを契約している場合、もし離婚した後で片方が住宅ローンの返済を行わない場合、もう片方が連帯保証人となっているため、その返済責任を負担する必要があります。
ペアローンとは、夫婦が住宅ローンを借りる方法の一種であり、夫と妻が別々に契約を結ぶことを指します。
この方法を利用することで、個々の負担を軽減し、より大規模な不動産を購入することができるという利点があります。
しかし、お互いが連帯保証人となるため、離婚後に相手が返済を怠らないように注意する必要があります。
連帯保証人とは、借金の返済を担保するために署名した人のことを指し、返済義務を負担することになります。
したがって、離婚後も住宅ローンの返済が滞ることがないよう、連帯保証人としての責任を忘れずに果たす必要があります。
ローンの共有名義解消がしにくい
さらに、夫婦で共有名義で住宅ローンを借り入れている場合には、金融機関からの名義変更の許可が得られない場合もあることに留意しなければなりません。
住宅ローンを単独名義に変更したい場合には、契約内容の変更が必要であり、金融機関の承認を得る必要があります。
そのため、共有名義を解消したい場合には、ローンの借り換えを検討することが適切です。
借り換えにより、単独の債務にすることができます。
また、現在よりも低い金利でローンを組めれば、返済の負担を軽減することができます。
上述の注意点を十分に考慮した上で、不動産を共有名義にするかどうかを慎重に検討するようにしましょう。
共有名義の変更や解消方法
共有名義とは、夫婦やパートナー、親子など、複数の人が所有権を持つ不動産のことを指します。
共有名義の不動産を取得する場合、例えば夫婦でマイホームを購入する場合は、両名が共同で不動産登記を行い、名義を共有することになります。
離婚時に名義変更するケース
離婚時に不動産の所有権を変更する場合、夫婦が合意した場合のみ、離婚届を提出し、夫婦間で協議が合意に達していることが必要です。
名義変更には、夫婦双方の申請書が必要です。
もし夫婦が合意している場合は、必要な書類に署名と押印をし、法務局に申請をして名義変更を行うことができます。
しかし、一方の合意が得られない場合、問題は裁判所で解決されることになります。
ただし、注意しなければならないのは、離婚届の提出から2年以上経過すると、財産分与の請求ができなくなるということです。
共有者が死亡した際の相続のケース
もし、不動産共有者の一人が亡くなった場合、その亡くなった人には相続人がいる場合は、その相続人が遺産相続の対象となります。
しかし、亡くなった人に相続人がいない場合、不動産を共有していたのが2人である場合、一般的にはその持分はもう一方の共有者に帰属されることとなります。
つまり、共有の状態は解消され、その不動産は単独で所有することになるのです。
共有名義の不動産を売却する方法
不動産を共有している場合、売却する方法はいくつかあります。
ここでは、売却方法に悩んでいる方向けに、3つの方法をご紹介いたします。
また、売却方法を決定する際には、他の共有者ともよく話し合うことが重要です。
共有者全員の同意を得て売却
不動産を売却するには、共有者全員の同意を得る必要があります。
共有者は、不動産全体を売却することで、相場価格で売却できる可能性が高くなります。
また、売却後の代金は、各共有者の持分割合に応じて分割されるため、トラブルの可能性は低いです。
ただし、注意が必要な点もあります。
共有者の中に1人でも売却に反対する人がいる場合、売却ができません。
そのため、事前に共有者同士で売却意思について話し合うことが重要です。
売却意思に相違がないかを確認し、共有者全員が同意することを確認しましょう。
自分の持ち分のみ売却
自分が所有している持分のみを売却することが可能です。
この場合、他の共有者からの承諾を得る必要はありませんし、他の共有者が自分の持分を買い取ってくれることも可能です。
もし共有者の中に買い手がいない場合は、買い手を見つけるために相談することがおすすめです。
ただし、持分のみを売却する場合は、通常は買取業者に頼むことが一般的です。
持分のみを売却する場合、単独名義の不動産と比較すると、売却価格は低くなります。
なぜなら、第三者が持分だけを購入する場合、不動産の自由な利用はできないためです。
また、売却後に他の共有者との問題が発生する可能性もあるため、持分を売却する前に事前に共有者に伝えることが重要です。
もし売却対象が土地である場合は、「分筆」という方法もあります。
土地の分筆とは、1つの土地を複数に分けて登記する手続きのことです。
分筆すれば、それぞれが単独名義となり、土地を自由に活用することができます。
ただし、分筆によって所有する土地の形状や位置に差異が生じる場合があります。
そのため、土地の資産価値が減少しやすくなり、分筆後に共有者間で問題が発生する可能性があるため、注意が必要です。
単独名義にしてから売却
不動産の共有者による特定の手続きを経て、不動産の所有割合を全て取得し、単独の所有権に変更した後に売却する方法があります。
この方法では、不動産を自由に扱うことができるため、自分の意思に基づいて売却することが可能です。
具体的には、まず購入したい持分の割合を他の共有者から取得します。
これにより、購入者が他の共有者と同じくらいの持分を保有することができます。
その後、購入者は自身の名義で不動産を所有するために、権利書や登記手続きなどの手続きを行います。
この単独名義にすることで、不動産の売却時には他の共有者との合意を得る必要がなくなります。
購入者は自身の意思だけで不動産を売却することができます。
さらに、共有の状態を清算し、単独名義にすることで、他の共有者とのトラブルが発生する可能性が低くなると言えます。
共有者間での意見の相違や問題がない状態で売却を行うことができるため、スムーズな取引が期待できます。
まとめ
ここまで不動産を共有名義にするメリットや注意点、売却方法などについて説明してきました。
共有名義にすると、税金の特別控除を受けることができたり、相続時の税金を抑えることができる可能性があります。
しかし、売却する際には通常の不動産よりも難しい場合や、他の共有者とトラブルに発展しやすい場合など、注意点もあります。
トラブルを避けるためには、不動産を購入する際に共有名義にするかどうかは慎重に検討する必要があります。
共有名義の不動産を売却して代金を分割する場合や、分筆した土地を売却する場合には、まず不動産査定を受けることがおすすめです。
これによって、不動産の正確な価値を把握することができます。